ビットコインのセカンドレイヤーの最新情報をお届けするニュースレター “Layer-2 Roundup” 創刊号へようこそ!ビットコインのレイヤー2に関するイノベーションやプロジェクトから、プロトコル変更や開発者コミュニティのホットトピックまで、1ヶ月分のニュースをまとめてお届けします。
創刊号では、Specter、Umbrel、SideSwapによるLiquid対応、CLNとLNDの最新リリース、Coin Cornerが発表した非接触型ライトニングデビットカードの他、Blockstreamが公開した最新のリサーチペーパーを解説します。
ネットワークの成長
Liquidおよびライトニング上のビットコイン残高は増加傾向を維持し、前年比でそれぞれ約45%、約325%増加しました。5月にはビットコイン価格が下落したにも関わらず、両ネットワークの総残高は7,550 BTCに達し、過去最高を記録しました。
注)残高は毎月1日時点のもの。
ライトニングとLiquidがビットコインネットワーク上に構築する決済と金融取引のためのレイヤーが、今後どのように既存金融システムを代替するのか、詳細はこちらをご覧ください。
ライトニング実装の最新リリース
次にライトニング実装に関するニュースです。Core Lightning (CLN) は既知のバグを修正するマイナーアップデート (v0.11.1) をリリースしました。前回のメインアップデートでは、チャネルの多重化、新たなgRPC APIプラグイン、最新版のオニオンメッセージ機能が導入され、パフォーマンスも改善しました。これらの詳細はこちらでご確認いただけます。
先週末には、CLNのリードエンジニア、Rusty Russelが新たなマイナーアップデート (v0.11.2) を準備中で、近日公開予定であることをtweetしました。
また、Lightning LabsはLNDユーザー待望のv0.15.0へのアップデートに向け、6番目となるRC版を先週公開しました。v0.15.0では、Taprootを使ったPSBTへの署名機能とMuSig2に関する実験的機能の導入の他、lncliへのアップデートが多数予定されています。RC版のユーザーからは、チャネルデータベースサイズの大幅削減が報告されるなど、今のところ高評価が寄せられています。リリースノートはこちらに公開されています。
ビットコインネットワーク上の金融システム
続いて、Liquidに関するニュースです。5月はソフトウェアへの統合や新プロダクトリリースが多数ありました。
まず、ノードの管理運用のためのオペレーティングシステムとして人気のUmbrelのアプリストアに、Elements Core (Liquidフルノード) が追加されました。Umbrelユーザーは、ビットコインとライトニングに加えて、Liquidのノードを構築、運用できるようになりました。
今後、Elements Coreアプリをより使いやすくするため、UIとダッシュボードの改善を予定しています。フロントエンドエンジニアを募集中ですので、ご興味があれば、Liquid Development Communityテレグラムグループか、新しいLiquid subredditにご参加ください。
個人がLiquidノードを運用する理由がわからないという声をよく耳にしますが、ノードを運用すれば、ご自身でL-BTCのペグイン、L-BTC発行状況の監査、アセット発行ができるようになるなど、より豊富なネットワーク機能を利用できます。
上級者向けのLiquidの利用ガイドはBlockstream ヘルプセンターでご覧いただけます。
他にも、Liquid上で人気のP2Pトークン交換プラットフォーム、SideSwapが公式デスクトップアプリをリリースしました。モバイルアプリのシンプルさと使いやすさは、デスクチップアプリにも、しっかり引き継がれています。また、SideSwapはLiquid上で発行された証券トークンEXOeuのスワップマーケットへの上場を発表しました。EXOeuは宇宙空間を舞台にした新たなMMOゲーム、Infinite Fleetの開発に投資する見返りに、20%の利益シェアを約束する証券トークンで、EU規制に則って発行されています。詳細はSTOKRで投資家向けレポートをご覧ください。
Liquid関連で今月の最大発表といえば、Specter Solutionsのv1.10.0で、Liquid Issuer extensionという新たな拡張機能が使えるようになったことです。Specter Desktopのユーザーは、コマンドラインに一切触れることなく、直感的なUIから簡単にLiquidアセットを発行できるようになりました。
Bitcoin CoreとElements CoreのノードをSpecter Desktopに接続するだけで、ユーティリティトークン、NFT、クーポンといった手軽なものから、ステーブルコイン、証券トークン、規制を満たすトークンといった金融資産まで、さまざまなLiquidアセットを発行することができます。
ビットコインと暗号学の最先端
Blockstream ResearchチームのTim RuffingとElliot Jinは、エアランゲン・ニュルンベルク大学およびCISPA Helmholtz Center for Information Securityの研究者と共同で、ROASTという閾値署名スキームを発表しました。
ROAST (Robust Asynchronous Schnorr Threshold Signatures) は、シュノア署名スキームのFROSTを利用するためのラッパーで、LiquidやRSKのようなフェデレーション型のコンセンサスモデルを採用するレイヤー2プロトコルにおいて、閾値署名をスケールさせる効果があります。
LiquidのFunctionary (サイドチェーン生成ノード) に指定されている事業者は、現在、11-of-15マルチシグウォレットを使ってサイドチェーンを運営しています。ROASTの導入で、閾値署名は67-of-100にスケールアップします。これにより、署名権限を持つ事業者の一部が署名できない事態になっても、スムーズなペグアウトを可能にするなど安定性の改善のみならず、Functionary間の署名プロセスも最適化されます。なお、ROASTはマルチシグの規模に制限がないため、上記67-of-100は上限ではなく、開発チームがパフォーマンスを検証した最大設定にすぎません。したがって、ネットワークの帯域幅と用途次第で、参加者がより多い場合でもROASTは利用可能です。
ROAST詳細は公式ホワイトペーパーまたはGitHubのリポジトリをご確認ください。
実はすごいプロジェクト
ビットコインのような成長著しく、変化の早い業界において、次々に発表される新規プロジェクトをすべて調査し、ノイズを排除して将来性のあるプロジェクトを見つけるのは非常に大変です。そこで、このコーナーでは、知名度は低いけれど「実はすごい」プロジェクトを毎月数件ご紹介します。興味を持ったら、ぜひ調べてみてください。
ライトニング・サービス・プロバイダー (LSP) 、Coin CornerはNFCを搭載した非接触型のライトニング決済カード、The Bolt Cardを発表しました。
The Bolt Cardを自身のライトニングノードに接続すれば、対面でのライトニング決済は「カードをタップするだけ」。決済フローを大幅に簡略化でき、ユーザー体験が改善します。もちろん、これまで同様、決済業者の仲介は不要です。LNURLを使って、任意のノードからBOLT11インボイスを取得するため、デビットカード、ギフトカード、プリペイドカードとして使えます。Coin CornerのCEO、Danny Scott氏によると、より堅牢なノンカストディアルタイプも開発中で、将来的には米国での販売も視野に入れているそうです。
続いて、プライバシーを重視するユーザーの間で、ここ数週間話題になっているRoboSatsをご紹介します。RoboSatsはTor上のライトニングを使ったP2P取引所で、ユーザー登録不要で使える上、通信はすべてPGPで暗号化されています。プラットフォームの流動性が高まってきたことで、プライバシーを守りながらビットコインを売買できると支持を集めています。
先週末には、リバースサブマリンスワップを使って、購入したビットコインをユーザーのコールドウォレットに直接送金できる新機能がリリースされました。
RoboSatsの使い方やオープンソースソフトウェア開発への参加方法について知りたい方は、ぜひ公式Telegramグループに参加してみてください。
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昨年11月にTwitterに巨大スレッドを投稿して以来、弊社はレイヤー2、特にライトニングとビットコイン初のサイドチェーンLiquidの開発状況を注視してきました。弊社では、これら2つ以外のビットコインのレイヤー2プロジェクトも積極的に取り上げていきたいと考えています。該当するプロジェクトの関係者の方々、ぜひこちらからご連絡ください。
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