Blockstreamにとっての2019年は多数のプロダクトのリリース、大量の機能のアップデート、そしてビットコインとライトコインのプロトコル開発への最先端の貢献に満ちた盛りだくさんの一年でした。一年間を通して数多くの発表を行って参りましたが、全てを追うのは大変すぎるという方のために、以下に「2019年のベストヒット盤」としてまとめさせていただきました。動画もぜひご覧ください!
Liquidが起こした波紋
2018年の暮れにローンチして以来、Liquid Networkは急速な成長を遂げました。複数のプロダクトに統合され、フェデレーションはメンバー企業が増加し、 600 L-BTCがネットワークにペグインされ、1600万ドル分以上のテザーの発行に利用されています。
Liquidを新たに統合したプロダクトが増加
2019年には、Bitfinex、BTSE、CoinutおよびRenrenBitが、既にLiquidを統合していたThe Rock TradingとSideShift AIの後を追ってLiquid BitcoinおよびLiquidベースのUSDtをサポートする交換所のネットワークに加わりました。
ネットワークに新規メンバー企業が参加
5月にはLiquidフェデレーションに世界中から新たなメンバー企業が参加したことを発表致しました。新規メンバーはCobo、Coinut、DMM Bitcoin、Huobi、OpenNode、Paradox Fund、Poolin、Prycto、Sideshift AI、そしてTaotaoなどです。最新のメンバー企業一覧はウェブ上のLiquid NetworkのホームページであるLiquid.netからご覧いただけます。
Liquid上でテザーが発行
7月からTetherがUSDtトークンをLiquid上で発行するようになり、OMNIやEthereumの代用となっています。TetherのチームはUSDtの長期的なスケーリング・ソリューションとしてLiquidに強い関心を示しており、最近Liquid上で1500万ドル分のUSDtの発行を行ったことはプラットフォームへの信頼感の現れだと感じています。
_“次回仮想通貨トレーダーの取引量が大幅に増加するタイミングにおいて、Liquidがビットコインや他のアセット、特にUSDtにとって最も利用されるトランスポート層の1つとなることを確信しています。” _- Paul Ardoino, Bitfinex CTO
新たな開発者向けツール
Liquid上でのアセットの発行は5月のLiquid Securities platformの発表をもって大変お手軽になりました。Liquid Securitiesを使用することで、事業者は素早く簡単にカスタマイズ性の高いセキュリティートークンをLiquid Network上で発行することができます。TokensoftやSTOKRのような包括的なセキュリティートークン発行プラットフォームが、新たなLiquid Securitiesプラットフォームを利用してLiquidベースのソリューションを開発しています。
“Blockstream Liquidには発表当初より親しんでおり、彼らが(Liquid Securitiesを通して)デジタル証券業界に強く必要とされている堅牢でスケーラブルなブロックチェーンソリューションが提供することを歓迎しています。” - Mason Borda, Tokensoft CEO
5月にはLiquid Asset Registryをローンチし、アセット発行者がLiquidサイドチェーン上の新しいアセットに識別子を追加できる登録簿として利用できるように致しました (例えば、Blockstream Greenウォレットはこの登録簿を参照してアプリ内のアセット名の表示に使用しています)。
また、Blockstream Lightningチームはc-lightningのLiquid Network対応を実装することでL-BTCを用いた瞬時のマイクロペイメントを実現しました。他のLiquidアセットのライトニング対応も計画されています。
Liquid上でのアセットの交換はオープンソースのLiquid Swapツールのリリースによってよりトラスト・ミニマルに、そしてよりプライベートに行えるようになりました。開発者向けのこのツールはトラスト・ミニマルなOTCデスクや非中央集権取引所など、取引が契約の不履行リスクや第三者によるカストディの必要なしに行えるアプリケーションの開発に使用できます。また、トレーダーがL-BTCやUSDtなどのアセットの交換に今すぐ使用できるGUIが提供されています (Liquidノードが必要です)。
検証可能で高水準なスマートコントラクトがまもなく利用可能に
9月にElementsの実験的なバージョン上で初のSimplicityトランザクションが行われました。近くエンジニアリングブログにてこの進展についてまとめる予定ですが、2020年の下半期を目処にLiquidにSimplicityを導入する予定です。
新たなジョイントベンチャー
1月には日本での新たなジョイントベンチャーであるCrypto Garageの設立が発表されました。これは日本のフィンテック業界の重要なプレイヤーであるデジタルガレージと東京短資とのジョイントベンチャーです。
ビットコイン・エコシステムへの貢献の他に、Crypto GarageはLiquid上の機関投資家向け取引プラットフォームであるSETTLENETを開発しており、近くステーブルコインの“JPY Token”をLiquid上で発行する予定です。
Liquidフェデレーションの理事会を設立
Liquidフェデレーションの参加企業の代表者が9月に東京に集まり、進捗の共有とLiquidのガバナンス構造の策定を行いました。その結果、フェデレーションを代表してメンバーシップ、管理監督、そして技術を管轄する3つの理事会が設立されました。詳細はLiquid.netのガバナンスに関するページをご覧ください。
Elementsのアップデートが継続
Liquid NetworkはBitcoin Coreのコードベースに基づいたElementsというプラットフォームを利用しています。当社のエンジニアリングチームはElementsをビットコインの最新版に遅れないようにアップデートを継続しており、その一方でDynamic Federationsやスマートコントラクト言語のSimplicityなどElements独自の機能を導入しました。一部のハイライトを抜粋すると:
- 5月: Elements 0.17.0 - 最新のBitcoin Coreアップデートに同期
- 7月: Elements 0.17.0.1 - デフォルトのネットワークをLiquidに変更
- 9月: Elements 0.18.1 - PSBTおよびDynamic Federationsのサポート
- 12月: Elements 0.18.1.3 - スタートアップの簡略化とUI改善
Blockstream Greenのローンチ
GreenAddressがBlockstream Greenとしてリフレッシュ
刷新されたBlockstream Greenウォレットアプリを昨年3月にリリースしたことがはるか昔のように感じます。それからBlockstream Greenは頻繁なアップデートを通して最先端のビットコインウォレットとしての評判を保っています。
GreenがLiquidに対応
6月にはBlockstream GreenがビットコインのサイドチェーンであるLiquid Networkに対応する初めてのモバイルウォレットとなりました。この統合によってユーザーはL-BTCやUSDt、および他のLiquidアセットを、慣れ親しんだマルチシグのセキュリティモデルとハードウェアウォレットを使用して送ったり受け取ったりすることができるようになりました。
もちろん、Blockstream GreenはLiquidアセットの送金に既定で秘匿トランザクションを使用するので、資金移動のプライバシーが気になるトレーダーにうってつけのウォレットです!
より多くのハードウェアウォレットに対応
Blockstream GreenのビットコインおよびLiquidウォレットをより多くのハードウェアウォレットに対応させるべく作業してきました。現時点で、Android版はTrezor One、Trezor Model T、Ledger Nano S、そしてLedger Nano Xに対応し、iOS版はLedger Nano Xに対応しています。最新のハードウェアウォレット対応状況はBlockstream Docs内に新設したページをご覧ください。
最先端の技術を導入
2019年を通してBlockstream Greenは小さな機能追加やバグフィックス、ローカリゼーション (今や14言語に対応)、そしてsats単位での表示 (#stackingsatsしているユーザー向け)に対応するなどして継続的に改善してきました。プライバシーを向上したいユーザー向けにiOSのビットコインウォレットで初のアプリ内Tor対応までしています。
Blockstream Miningが発表
今日に至るまで最大のプロダクトリリースの1つであるBlockstream Miningは、マイニング用ハードウェアの専用施設内でのコロケーションサービスです。 ビットコインマイニングを始めたいが専用の施設を建設・維持したくない法人様向けに、Blockstream Miningの施設にマイナーを設置し、専門家チームの管理による電力供給、最適化、そしてメンテナンスのサービスを提供します。
300MWの電力を確保しているBlockstream Miningは世界最大級の法人向けホスティングプロバイダーの1つとなります。現在ハードウェアをお預かりしているクライアント様の中にはFidelity Center for Applied TechnologyやLinkedIn共同創業者Reid Hoffman氏がいます。
また、Blockstream Miningに加えてBlockstream Poolという、BetterHashマイニングプロトコルに基づいた次世代マイニングプールをお披露目しました。これはマイナーへの報酬支払いを最適化しつつ、ビットコインマイニングの非中央集権性を改善するものです。
Blockstream Satelliteの機能拡張と範囲拡大
ユーザーによる配信を解禁
1月にBlockstream Satellite配信サービスを開発者やユーザーに提供開始し、誰でもメッセージを衛星経由で配信できるようにしました。開発者はBlockstream Satellite APIを利用することで簡単なRESTful APIを利用してメッセージを宇宙から地球へと配信することができます。
このAPIは送信内容を区別しないため、セキュアなメッセージ配信、ビットコイン以外のブロックチェーン、世界中を相手にしたポッドキャストなど、何でも配信することができます。データ使用量はライトニングネットワークを利用したマイクロペイメントで支払います。
開発者ではない一般ユーザーも当社が提供する配信ページから簡単にメッセージの衛星配信を行うことができます。
All Meshed Up
メッシュネットワーク関連のスタートアップであるgoTennaが5月にBlockstream Satelliteソフトウェアの統合をローンチし、Blockstream Satelliteサービスのオフライン環境での有用性を向上させました。オープンソースのtxtennaソフトウェアを利用して、いわゆる“satnodes”をローカルなメッシュネットワークに簡単に接続し、受信したビットコイントランザクションを検証することでビットコインのネットワーク障害耐性を向上します。Blockstream Satelliteとメッシュネットワークの組み合わせについて基本的な情報が欲しい方は、YouTube上の最新のプレゼンテーションをご覧ください。
ビットコインの進化への貢献
2019年も、Blockstreamのリサーチチームはビットコインプロトコル全般に関わる先進的な研究成果を発表し続けてきました。トランザクションのプライバシー、ノードのネットワーク帯域幅の使用量、ビットコイン預かり残高の証明、ハードウェアウォレットのユーザビリティ、そしてトランザクションのプログラマビリティに渡る成果の一部を記します:
- Minisketchはビットコイン・フルノードを動かすのに必要なネットワーク帯域幅を大幅に削減し、より多くのノードとの接続を維持しネットワーク全体の分散性を高めることに繋がります。
- MuSigは通常の単一署名によるシュノア署名トランザクションと区別のつかないマルチシグトランザクションを生成し、ビットコイン全体のプライバシーの強化に繋がります。
- Bitcoin Proof of Reserves BIP及びツールを仮想通貨取引所やカストディ事業者によるビットコイン預かり残高の証明方法を標準化するためにリリース致しました。
- HWI (Bitcoin Hardware Wallet Interface)はソフトウェアからハードウェアウォレットへのコミュニケーション方式を標準化します。
- Taproot BIPを提案しました。これはシュノア署名を導入し、多くの使用条件のあるビットコイントランザクションのプライバシーをMASTを利用して向上します。
- Erlayはビットコインノードが使用する帯域幅はさらに半減でき、タイミング攻撃からプライバシーを守ることができると結論づける研究成果です。
- Miniscriptを発表しました。これはビットコインスクリプトの作成を機械的に検証可能で人間に判読可能な形でスムーズに行えるようにする言語です。
ライトニングへの驚くべき数の機能追加
昨年を通してBlockstreamのLightningチームは c-lightning実装やライトニングの仕様などへの数多くの貢献をしました。
ライトニング・プラグイン機能の誕生
3月、c-lightningのプラグイン機能が誕生しました。プラグイン機能によってc-lightning実装自体の軽量さを保ちながら、開発者は好きなプログラミング言語で拡張機能を追加することができます。c-lightningのプラグインとして開発された機能の例がエンジニアリングブログのプラグインに関する連載に掲載されています。
マルチパート・ペイメント
マルチパート・ペイメント機能が12月にリリースされ、ライトニングウォレットの理想的なエクスペリエンスに一歩近づきました。この機能はライトニング支払いを複数のチャネルや経路に分割して送ることで、それらのチャネルの流動性を必要に応じて合計して使うことができるようになるというものです。1つの支払いに複数のチャネルを使えるようになるため、開設すべきチャネル数や資金の振り分け方に悩む必要が軽減されます。
その他のハイライト
- 3月: c-lightning 0.7.0 - 新しいプラグイン機能とルートブースト機能
- 7月: c-lightning 0.7.1 - ゴシップの改善とプラグインフック機能の強化
- 8月: c-lightning 0.7.2 - プラグイン機能の拡張と動的追加・削除に対応
- 8月: Static Remotekey - ライトニングの仕様提案が採用
- 11月: c-lightning 0.7.3 - 外部データベースへの対応とゴシップの最適化
- 12月: c-lightning 0.8.0 - マルチパートペイメントに対応、プラグイン機能の拡張
- 12月: Base AMP - ライトニングの仕様提案が採用
2020年にも乞うご期待!
まだ2020年に入って一月ほどですが、BlockstreamはすでにLiquid.netのローンチやBTCPay ServerのLiquid統合といったいくつかのエキサイティングな発表を行っています。他にも年内に新たなプロダクトのローンチを予定しているほか、Liquid、Blockstream Green、Blockstream Mining、Blockstream Satelliteへのアップデート、そしてそれ以外にもビットコイン・プロトコルを改善する多数の提案に取り組んでいます!
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